一日
「いってきます。」
好きな人の、優しい声から始まる一日。
柔らかい髪の、肌が透明で目の茶色い人。
起きてみると、カーテンが開いていた。
朝日が気持ちよかった。
水を飲んだ。
取り急ぎの朝ごはんを。
クリニックまで歩いた。
昨晩は酷く花粉症の症状が出た。
動悸がして、夜中に起きてしまった。
クリニックで、鼻・目の処方をしてもらう。
薬局で薬をもらう。
気になっていたサンドイッチ屋さんが開いていたので、念願のいちごサンドを買う。
お客さんのおじいちゃんとおばあちゃんが、「こんにちは」「今日はあったかいね」と話していた。
帰り道、ミモザのあったお花屋さんを思い出す。
家とは逆方向だったけど、戻って、ミモザを買いに行った。
可愛い、黄色い春の花。
また帰り途中、銀行でお金を下ろすのを思い出した。
また引き返して、無事引き出し。週末の旅行のため、準備。
お花を片手に、サンドイッチと薬の入った袋をぶら下げて、歩いてうちまで。
うちにつくなり、とっておいたピンクレモネードの瓶に、ミモザを差す。
少し大きかったので、剪定した。
先週買ってきた、青いカーネーションと並べる。陽の差し込む窓際に置いてみる。
青と黄色が綺麗だ。
お花を飾ったテーブルに、買ってきたいちごサンドを並べる。
お手製のカフェオレと一緒にいただいた。
生クリームが甘くて、ケーキみたいだった。
カフェオレも、初めて作った割には美味しくできた。
「お医者さん行ってきたよ、喉、なんでもないって。サンドイッチ屋さんも今日は開いてた。色々ありがとう。」
「世話するのは当たり前。なんでもなくてよかった。あんまり無理しないでね、俺も今度サンドイッチ買いに行こう。」
やっぱり、柔らかくて、優しい人だ。
金曜日中途半端になっていた作業のため、少し仕事机に向かう。
金曜の朝に来ていたメールを、お客さんに返す。
対応に悩んでいることを、経験豊富な先輩に相談する。
お腹が空いてきたので、スーパーへ。
溜まっていた、リサイクルのパックやトレーを持っていく。
野菜と、果物と、チョコレートと、オリーブオイル、白くて丸いパンを買う。
お昼は惣菜コーナーで済ませた。
図書館でよしもとばななの本をかりたかったけれど、月曜日は休館日だった。
行く前に気付いてよかった。
聞くだけの会議があったので、海に向かって自転車を漕ぎながら聞いた。
思っていたのと違う内容の伝達だった。
海についた。風が強かった。
波に乗っている大人の男の人がたくさんいた。
この町ではスーツの人をみないけど、どんなふうに生活しているんだろう。
中学生くらいの男の子が一人で海に入っていった。
ずっとみていた。2−3分で、あっという間に遠くの沖まで出ていった。
おとこのこは小さくなって、波に揉まれていた。
みえなくなったり、みえたりした。波に乗っているところはみられなかった。
海辺で会社のメールをチェックしていると、お客さんから返信が来ていた。
「お休みのところ、ご対応ありがとうございます」
私が休みであることをちゃんと認識してくれていた。
優しさだ。ほっこりした。ありがたい。嬉しい。
この一言だけで、良い仕事だなって思える。
帰ってきたら、下の部屋の工事が終わっていた。
また明日も来るのかな。
温かい飲み物と、ブラックチョコレートとくるみを用意した。
歌詞のない、ジャズ調のBGMを流している。
一人だけの部屋で、いろんなことを考えている。
この時間が大好きで、幸せだ。